*管理人*

ぱくお

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カエル林檎

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 私は今日起きた出来事をひとまずまとめようとノートを取り出しました。ペンを持ち、ひたすら書き続けます。1日だけで沢山の人と出会い、突然お屋敷に住むことにもなり、双子は相変わらず謎めいてて、思い出せば出すほどまとまらなくなりました。

「ダメだ…カオス過ぎます……。」

 思わず声に出してしまうくらいの急展開です。明日からとりあえず、突っ込むこともするべきでしょうか。尚更展開に追いつかなくなってしまわないでしょうか。

「なんか凄い唸り声が聞こえてくるんですけど…。」

 はたまた声が聞こえてきました。双子なら早く出てきてください。バルコニーにはいなさそうですが…と出てみると、窓に向かって左の部屋にティアさんの部屋があったのでした。ティアさんは御機嫌斜めな様子で柵に肘をついています。こういったシーン一度はどこかで見た記憶があります。

「って、隣ティアさんだったんですか⁉」

 冷静にいくか迷いましたが、とりあえず驚いてみました。

「面白くないから普通にして下さい。はぁ…何でよりにもよって貴女が隣なんですか。」

「私に聞かれましても、わかりかねます…。」

「本当、最悪です。」

 にっこりしながら言っていますが、先程から引き続き相当ご立腹な様子です。私も困惑です。

「まぁ別に、イバラのせいだろうから良いんですけど。」

 ティアさんは半ば諦めたようにため息をつくと、両手に顎を乗せたのでした。私はそれを見つつ、夜風に当たるのでした。

 と、こんな状況下で言うべきことではありませんが、お昼の初対面時から気になっていることがあり、せっかくなので聞いてみる事にしました。

「ティアさん、ティアさんの髪の毛ってどれくらい長いんですか?」

「え、いきなり過ぎませんか…。」

 流石に今度は彼が困惑しています。

「でも、言うよりも実際に見た方が早い気がしますね。・・・仕方ないので教えてあげます。こっちの部屋に来てください。」

 これまたベタな展開です。先程まで近づくなと言われ続けていましたが、近づく許可を得た気持ちでいっぱいになりました。

 

 

 ドアをノックし、ティアさんのお部屋にやって来ました。部屋の中は整えられており、清潔感で溢れています。その中でも目に付いたものがありました。

「レイピア・・・?」

 何本か丁寧に保管されていたのです。定期的にメンテナンスもされているのか、どれも美しく輝いていました。

「いざという時に使えるので置いてあります。剣よりそちらの方が性に合ったので」

 いざという時、そんな時があるのでしょうか。ここの世界は見る限り平和そうで考えられませんでした。

「ところで髪の毛、もう解いても良いですか?寝る時はまた別の髪型で時間かかるので早くしたいんですが。」

「あ、はい。楽しみです!」

 楽しむ要素ないけど。という表情をされましたが、気にしません。ティアさんはバレッタを外すと、順番にリボンを解いていきました。みるみる落ちていく金色の髪の毛は、想像よりはるかに長く、美しいものでした。

「こんな感じです。満足しましたか?」

「わぁ!こんなに長くて綺麗な髪の毛初めてです!」

「・・・喜んでいただけて光栄ですね。」

「どうして伸ばしているんですか?」

「いい加減にしてください。と言いたいところですが・・・伸びるんですよね。」

「伸びる・・・?」

「えぇ、一般人よりも早いスピードで。それはもう轟速です。」

 そう言われてしまうと、どこまで早いスピードで伸びるのか気になってしまいます。身長よりずっと長い髪の毛ですから、相当なはずです。

「まぁ、冗談ですよ。」

 ティアさんの口から冗談という単語が出てくるとは思いませんでした。彼は私がハテナを浮かべているのを見て、くすくす笑うのでした。

 

 

 ティアさんが髪型をセットし直し終わった頃には、9時を告げるチャイムが鳴り響きました。

「そろそろ寝る時間ですね。って、まだ居たんですか。」

 髪の毛を整えることに集中していたのか、また冗談なのか、私に言いました。

「とても長い髪の毛なのに、凄く綺麗だなぁと思いながら見ていました。」

「・・・・・・今すぐに出て行ってください。そして寝てください。それじゃ」

 ティアさんは簡単に言うと、私をポイッと捨てるように部屋の外へ追い出しました。照れ隠しでしょうか。それにしてもここでも展開が早くて追いつきません。もう少しくらい、居られたら良かったのになと感じてしまいました。髪の毛も本当に綺麗で気持ち良さそうで触ってみたいですし。とは言っても、喋ることは出来ても髪の毛に触れるなんてそんな事、まだまだ出来なさそうにありません。何度も言いますが、出会って1日ですし彼の対応を見る限り絶対にダメでしょう。私は流石に諦めて、隣にある自室(になったところ)へと戻りました。

 ティアさんに言われた通り、今日はもう寝ましょう。私は足早にベッドへ向かうと寝転がりました。・・・とは言ったものの、お昼寝効果が効いていて寝られません。

「寝られないの?」

「オレ達と遊ぶ?」

 そんな時双子はやって来ます。流石、私の心が読めているだけありそうです。

「何して遊びましょうか。トランプとか?」

 私は2人に提案します。

「いいな!トランプ!」

「3人だし神経衰弱とかやりたい」

「・・・待って、トランプ持ち合わせてないわ・・・。」

 我に返り思いました。私トランプどころか何も持っていません。

「僕持ってる」

 モランゴくんはジャケットからトランプを出すと、かっこよくカードをシャッフルしベッドの上へ並べました。準備が良すぎます。アリスモチーフだから得意なのか、たまたまモランゴくんが得意なのかはわかりませんが、まるでマジシャンのようです。

「褒めてくれてる?ありがとう。」

「よし、誰から引いてく?ジャンケン?」

カ ルアくんはベッドに向かって膝立ちになると、真剣な眼差しでカードを見つめました。ジャンケンに負けないおまじないをしっかり行う辺り、可愛さを感じてしまいます。

「ジャンケン!ポン!」

 私達は声を合わせて手を出しました。

・・・あいこです。

「ジャンケン!ポン!」

 またまたあいこです。

 因みに後5回続けましたがあいこでした。勝ちたい雰囲気を醸し出すカルアくんでさえ、私の心を読んで弄んでいるのかもしれません。

「ジャンケン!ポン!」

「っしゃ!オレの勝ち!」

「あ、カルア勝ちに出たね。」

「だってマリアにバレバレなんだもん。だからオレから引いちゃうもんね!」

 カルアくんは手を伸ばすと、カードを2枚表にひっくり返しました。初めのうちは揃うことは無いだろうと思っていましたが、どうやら違うようです。次はどっちが引くか、ということになりましたが少し怖くなってしまった為、モランゴくんに任せることにします。

「あ、正解。」

 神経衰弱ってこんなにポンポン当たるものでしたっけ・・・。心だけでなく、カードの裏さえ読めてしまうのかしら。だとしたら私いきなり負け確定じゃないですか!

「えいっ!」

「・・・・・・ハズレ」

カ ルアくんは少し笑いながら言いました。そしてまた簡単に引き当てる彼らを見ながら、私は1枚も当てられないまま終わるのではないか・・・なんて考えるのでした。

 

 

「あがりー!」

「あがり。」

 本当に終わってしまいました。流石に、何枚かは当てましたがここまで双子が強いだなんて・・・。私は手持ちのカードを見ながらムスッとした顔で言いました。

「こんなに少ない・・・。」

 カルアくんとモランゴくんは、お互いほぼ均等な数のカードを持っています。どうしてこうなったのでしょう。私そんなに記憶力がないなんて思ってもみませんでした。いいえ、彼らが強過ぎるのです。

「まぁまぁ、そういう時もあるって。」

 カルアくんはベッドに顔を伏せながら言いました。モランゴくんもカードを回収しながら頷いています。

「そんなものでしょうか・・・。」

「そんなものだよ。・・・っと、ほら流石に寝た方が良い時間になったんじゃない?」

 2人は時計に向かって指を差しました。すると時計は10時を過ぎています。まだ遊んでいたい気持ちもありますが、2人にとっても迷惑になりかねないので大人しくすることにしました。

「ツッコミどころ満載の1日だったし、体感1週間は経っているボリュームだったけど・・・本当に楽しかったわ。とにかく、遊んでくれてありがとう。おやすみなさい。」

 すると2人も「おやすみ」と言い、満足そうに手を振って出ていきました。

 本当に1週間が経っていたり、もしくは1日が24時間ではなくもっと長かったりするのかもしれません。それだけ充実していたのでしょう。しかし、明日もきっと慌ただしくなるはずです。気持ちを切り替えるためにも、しっかり睡眠をとろうと私は思い目を瞑ったのでした。