*管理人*

ぱくお

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カエル林檎

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コンコンッと、ドアがノックされたのがわかりました。私は寝起きで頭がぼ~っとしながら扉の方へ向かい、ドアノブを掴むと開きました。

「夕飯の支度が整いましたのでお迎えにあがりました。・・・あら、今までお休みでしたか?」

私はここでハッとしました。こんな少しの時間でも眠っている間に髪の毛はぼさぼさになっていたのです。

「す、すみません。整えますね」

私は慌てて直そうとしましたがそもそもヘアブラシを持っておらず、部屋のどこに何があるのかも理解していなかった為、更に大慌て。するとメイドさんはふふっと笑い、

「マリア様、こちらに座ってください。」

と、髪の毛を整えてくれたのでした。ヘアアレンジもしてくださり、手先の器用さが伺えます。流石メイドさんです。ドレッサーのどこに何があるのかも教えてもらい、その間に髪の毛も完璧に仕上がったようです。

「わ、かわいい・・・。」

「寝癖を直す時間がない時に便利なので、是非活用なさってください。もし良ければお教え致しますよ。」

メイドさんはとても楽しそうに言いました。「是非お願い致します。」と私が返事をすると、はい!と笑顔で言うのでした。髪型を変えるのが苦手なので羨ましいと同時に、とても可愛らしいなぁと思います。



私達は部屋を出ると長い廊下を歩きます。近いうちに探検しないと、自力で自分の部屋にも帰れなくなりそうです。私の部屋になった場所からそこまで遠くない所に食堂はありました。メイドさんは「こちらですよ」と言うと、扉を開きました。もう既に皆さんお揃いのようでした。ここのお屋敷は全員で食事をするみたいです。一緒にいたメイドさんとお隣の席になりました。でもおかしいですね。使用人さん達以外に大人の方が見当たりません。お父様やお母様はどちらにいるのでしょうか。よくある、出張というやつでしょうか。

と、そんな事を考えていて気づきませんでした。目の前の席がティアさんだったのです。彼と目が合ってしまいましたが「こっちを見るな」という表情をした後、顔を逸らしたのでした。私はどうしてここまで嫌われているのか気になりましたが、頑張って気にしないことにします。

「みんな揃ったよな?では、頂くとしよう。」

イバラさんの一言でいただきますをしました。突然現れて突然暮らすことになったのに、しっかりと準備がされている辺りお金持ちだなと感じます。美味しい食事まで提供されるなんて、どこまで信じたら良いのでしょう。いえ、この世界は“普通”ではありません。信じるも何もないのです。

「このお肉、すっごく美味しいです!」

私は目の前にあったお肉を食べながら言いました。

「それは良かったです。沢山あるので是非食べてくださいね。」

「やったー!」

メイドさんは新しい皿にお肉をよそうと、私に「はい、どうぞ」と渡してくれたのでした。絶品とはこういう事を言うのだろう、そう感じました。

そういえばティアさんはどんなものを食べるのかしら。見るのも申し訳ないのですが、ずっと下を向いているのもアレなのでチラッと見てみることにしました。チラッと。

「何ですか」

「えっ!?あ、いえ・・・何でもないです・・・。」

サラダを口に運ぼうとしているところを止めてしまいました。ところでティアさん自身、私の方を見なければ目が合わないはずですが、何故・・・?それにしてもティアさんはどの角度から見ても美人さんなようです。クールな性格をしてそうなのは確かなので、尚更近づきにくさはあります。意図的に近付いてる訳ではないんですよ。決して。

「・・・ティアさん、さっきから野菜ばかりですが少食なんですか?」

「・・・・・・。別に何でも良いじゃないですか。」

「そうですよね・・・」

ティアさんは先程よりもトーンが低く、怒っているのがよく伝わりました。私は心の中でごめんなさいと呟くのでした。

「ティアはいつもガッツリだぞ。お前が来たから抑えてるんじゃないのか?

「は、はぁ・・・!?」

おっと、これは凄い展開です。

「違いますよ。本当に特に何もありません。あと、もう僕は部屋に行きますので。マリアさん。絶対、着いてこないで下さいね!」

ティアさんは慌てて立ち上がると、すぐにその場を後にしました。私は流石に追いませんでしたが、まさかこの流れで出ていってしまうとは思いませんでした。それ以前にイバラさんが話に介入してくることに関してもびっくりです。

「ツンデレ展開だな」

「面白くなりそうだよね」

またまた突然、双子の声が聞こえてきたので私は声のする方へと顔を向けました。当たり前のようにテラスでお茶を飲んでいました。どうツッコミを入れるべきか迷いましたが、やはりやめておきます。

「ところで、ティアさんはあのままで良いのでしょうか?」

「気にするな。あと、あいつに近づいても問題ないから」

危うく、飲もうと口に含んだスープが出るところでした。問題ないとはいえ、問題大ありです。特にここにいる皆さん、出会って1日でキャラが濃いことがわかってしまった為、それなりの対応をするべきだと既に考え始めてもいます。周りからしたら、私が一番おかしな人なのには違いありませんけどね。

「明日からどう過ごすべきかしら・・・」

私は考え込みます。

「さっきも言ったけど何もせず、普通に過ごせばいい。」

イバラさんは食べ終わった後のお皿をまとめると立ち上がりました。

「普通に過ごせと言ったが、自分がどうするべきかはお前本人に任せる。その時が来たら、俺も考える。」

そう言って、席を後にしました。その時とは、どんな時なのでしょう。私も席を立つと部屋に戻ったのでした。