*管理人*

ぱくお

*サイト名*

カエル林檎

*URL*

http://otokyo.jimdo.com

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*prologue*

 人は皆、夢を見る。眠りについている時に見る、夢。
 その夢はどうやって作り出されているのだろう。自分が理想とする世界、もしかしたら、外から誰かが物語を紡ぎ出しているかもしれない。そんな不思議でどこかおかしな時間。
 私達はそんな夢の世界が大好きだ。
 
 
  ☆★☆
 
 ───暗闇。
 私は光と音のない世界に1人立っていました。歩くとコンコンと音がするため、辺りにあらゆる音が存在していないだけと理解出来ましたがとても気味が悪く思います。とりあえず私以外に誰か、誰かいないかと声を発してみました。
「こんにちは、誰かいますか?」
 言葉も出るようで安心しつつ辺りに耳を傾けてみましたが、やはり誰もいなさそうです。少し残念な気持ちもありましたが、悔やんでばかりもいられません。私は少しずつ歩みを進め何もない世界をさ迷います。
 本当に1点の光もないものか、誰もいないものか、探し回ってどのくらいが経ったでしょう。誰かの話し声が聞こえてきました。しかもその声は1人ではなさそうです。
「お嬢さんを探しているのです。」
「おや。それはどちらのお嬢さんですか?」
「桜色を身にまとった小柄な少女ですよ。」
「ほうほう、小柄な少女・・・。」
 私は会話の聞こえる方向へと歩いていきます。その声がどんどん大きくなっていくのを感じながら恐る恐る声をかけてみました。
「こんにちは。そこに誰かいらっしゃるのでしょう?」
 すると、声がパッと消えてしまいました。
 誰かがいたという気配もその一瞬で無くなってしまい、また、ただの暗闇となってしまったのです。ただ暗いだけでなく、とても不思議な世界にいるのは間違いありませんでした。しかし声がしたということは、私がここに1人しかいないということではなくなったのです。「すみません。顔を出してください!」私は改めてそう叫びました。叫び声は少しですが木霊するようで、静かな水溜まりに一滴の雫が落ちるように響いていきました。やはり出ては来ないだろうと感じ始めた時、彼らは現れました。
「たった今話していたお嬢さんが私達をお呼びのようですよ。」
「これは・・・本当に可愛らしい少女ですね。」
 私を見つめる視線は感じるものの、彼らを実態として捉えることが出来ない様でした。辺りをぐるぐると見回しますが、それを確認できません。目は暗闇に慣れてきているはずなのにどうしてでしょう。
「姿を見せてください。いるのはわかっているんです!」
 私はもう一度叫ぶと、彼らは申し訳なさそうに目の前にやって来てきました。
「こんにちは、お嬢さん。」
「こんにちは、はじめまして。」
 服装は全く違いますが、彼らは見た目がそっくりでした。同じ格好をしていたらどっちがどっちだか検討もつきません。
 私も「こんにちは。」と挨拶をすると、2人は見つめ合いました。するとどうでしょう。久しぶりの再開にはしゃぐ人達のように私に抱きつき、
「会いたかったー!」
「ずっと待ってたんだよ!」
 と、彼らは先程までの大人しい雰囲気とは違い、喜びに充ちた表情をして言いました。私はなんのことかわからずに困ってしまいましたが、あまりにも嬉しそうにしているので、よかったと安心もしたのでした。
「さっきはごめん。反応が可愛くてつい、いたずらをしてしまったんだ。」
 笛を持った彼は笑いながら言いました。そしてふと、自己紹介がまだだったことを思い出します。
「オレはカルア。笛を吹くことが好き!面白いことは大好き!双子の弟、よろしくな。マリア。」
 マリア、そう呼ばれました。私はマリアという名前なのでしょうか。思えば名前を思い出せずにいたので、それが名前なのでしょう。既に不思議なことがたくさん起こっているこの世界、素直に受け入れます。
「僕はモランゴ。紅茶が好き。面白いことはもっと好きだよ。それと、一応双子の兄なんだ。よろしくね。マリアちゃん。」
 もう片方も自己紹介をしてくれました。彼は不思議の国のアリスに出てくる帽子屋さんのような格好をしています。ということはどうでしょう。カルアくんは笛吹き男の格好でしょうか。有名な作品をモチーフにした人達が出てくる世界なのか、まだ2人にしか出会っていないのでわかりませんが、私にはそう感じました。
「よろしくお願いしますね、カルアくん。モランゴくん。」
 手を差し伸べ、2人と握手をしました。流石男の子の手、簡単に包まれてしまいます。
ここで大切な事を思い出します。この世界が一体何なのか、それを2人に聞いてみることにしました。
「この世界はただの暗闇だよ。まだ、何も始まってないんだから。ね、カルア。」
「そう、まだ何も始まってないんだよマリア。勿論、今すぐ次に進むことも可能だけどね。」
「それはつまり、この何もない世界から出られるってこと?」
 勿論と2人は頷くと、同時に指を鳴らしました。
 もう何が来ても驚きはしないだろうと思っていましたが、目の前に突然現れた大きくて、とても豪華な扉には少し驚いてしまいました。
「マリアがこの先に進むのなら止めないよ。だって、ここにいたってつまらないしね!」
「そうだね。・・・お手をどうぞ、マリアちゃん。」
 私は何の迷いもなく彼らの手を取ると、扉が開かれました。「そうこなくっちゃ!」とカルアくんはテンションを上げ、中へと案内されます。
 
 暗闇の世界に1点の眩い光、その光の先には一体何があるのでしょうか。私は期待と不安でいっぱいになるのでした。